「たぶんあまりに長く待ちすぎたせいね、私すごく完璧なものを求めてるの。だからむずかしいのよ」
「完璧な愛を?」
「違うわよ。いくら私でもそこまでは求めてないわよ。私が求めているのは単なるわがままなの。完璧なわがまま。たとえば今私があなたに向かって苺のショート・ケーキが食べたいって言うわね。するとあなたは何もかも放り出して走ってそれを買いに行くのよ。そしてはあはあ言いながら帰ってきて『はいミドリ、苺のショート・ケーキだよ』ってさしだすでしょ、すると私は『ふん、こんなのもう食べたくなくなっちゃったわよ』って言ってそれを窓からぽいと放り投げるの。私が求めているのはそういうものなの」
「そんなの愛とは何の関係もないような気がするけどな」と僕はいささか愕然として言った。
「あるわよ。あなたが知らないだけよ」よ緑は言った。
「女の子にはね、そういうのがものすごく大切なときがあるのよ」
「苺のショート・ケーキを窓から放り投げることが?」
「そうよ。私は相手の男の人にこう言ってほしいのよ。『わかったよ、ミドリ。僕がわるかった。君が苺のショート・ケーキを食べたくなくなることくらい推察するべきだった。僕はロバのウンコみたいに馬鹿で無神経だった。おわびにもう一度何かべつのものを買いに行ってきてあげよう。何がいい?チョコレート・ムース、それともチーズ・ケーキ?』」
「するとどうなる?」
「私、そうしてもらったぶんきちんと相手を愛するの」
「ずいぶん理不尽な話みたいに思えるけどな」
「でも私にとってそれが愛なのよ。誰も理解してくれないけれど」と緑は言って僕の肩の上で小さく首を振った。
「ある種の人々にとって愛というのはすごくささやかな、あるいは下らないことから始まるのよ。そこからじゃないと始まらないのよ」
村上春樹の「ノルウェイの森」が映画化されるようだ。何年か前、文庫本のヤツを上と下、一気に読んで、そのお陰でしばらくの間、胸が空っぽになって過ごしたことがある。だから映画が出来上がる前にもう一回読んどこうと思ったわけ。
で、読んだ。
っていうか、読んでる。
上記は、主人公が一回キスを交わしてしまう女の子の「愛の理論」を語る場面だけど..誰かさんに似てるとこあるからメモってみたっていうか..まぁ、そんなとこ。
大変、緑「な」理論だけど。
誰かさんは未だ未だ緑、つまり青臭いってことかな。
「ある種の人々にとって愛というのはすごくささやかな、あるいは下らないことから始まるのよ。そこからじゃないと始まらないのよ」...いいね!これけっこう好き!